気候変動
への取り組み
当社は「この手で守る、自然と資源」をパーパスに掲げ、「環境と社会をつなぐ循環経済の担い手になる」ことを目指し、1952年の創業から地球環境を守る事業活動を展開してきました。当社は事業の成長と社会的課題の解決の両立を実現しています。
気候変動は人類共通の課題であり、当社においても事業マテリアリティの一つと考えられています。サステナブルな社会の実現のために、当社事業による貢献と当社自身のCO2排出量削減に取り組んで参ります。
TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく開示
TCFDへの賛同表明とガバナンス体制の強化
当社は、2021年12 月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に対する賛同を表明し、事業部門、技術部門、管理部門から成る社内横断のTCFD対応チームを立ち上げ、気候変動関連のリスクと機会の特定、気候変動が当社事業に与える中長期的なインパクトの把握、対応策の検討を行って参りました。
また、サステナビリティ推進体制を強化するために、従来のSDGs推進会議を拡充させ、代表取締役社長(CEO)が統括し、事業部門、技術部門、管理部門の担当役員等をメンバーとするサステナビリティ委員会に変更しました(2022年4月)。サステナビリティ委員会では、サステナビリティに関する戦略、企画、施策、リスク管理及びモニタリングの審議を四半期ごとに行います。重要事項はグループ事業執行会議にも報告することになっています。気候変動関連は従来SDGs推進チームの中で対応してきましたが、今後は気候変動分科会で対応していきます。
取締役会に対してはサステナビリティ委員会の審議事項を報告するとともに、重要事項を取締役会で決議することでガバナンスを効かせます。
TCFD対応で明らかになったリスクと機会については毎年1回以上、取締役会及びサステナビリティ委員会に対応状況を報告していきます。
戦略
リスクと機会の抽出
2030年における当社貴金属事業(国内及び北米事業)、環境保全事業に影響を及ぼす気候変動関連のリスクと機会の抽出を行うとともに、「大」「中」「小」の3段階で定性的に評価しました。その際には2030年以降2050年に向けての気候変動の更なる影響についても考慮しました。その結果、「政策・法規制」「市場」「技術」などが特定されました。
シナリオの概要
次にシナリオ分析を行い、事業への影響を調査しました。シナリオは2100年までに、産業革命前に比べ、世界の平均気温が4℃ 前後上昇するシナリオと、1.5℃上昇するシナリオの2つを採用しました。 分析に際しては、国際エネルギー機関(IEA)のWorld Energy Outlook 2021、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書、日本政府の発表している資料等を参考にしました。
シナリオ分析結果
4℃シナリオは、現状の延長の成り行きの世界であり、2030年時点では影響は少ないことが分かりました。一方で2050年に向けては、異常気象による台風や水害等自然災害の激甚化といった物理リスクの増加が予想されます。当社では事業継続マネジメント(BCM)の策定を行うとともに、工場移転時に災害に強い立地を選定するなどの対応をおこなっています。
1.5℃シナリオでは、今世紀半ばのカーボンニュートラル実現に向け、強力な政策措置がなされると想定されます。その一つである炭素税を含むカーボンプライシングが導入されると、環境保全事業を中心にコスト増加の影響を受けることがリスクとなります。一方で貴金属事業においては、CO2排出が相対的に少ないリサイクル金属の評価やコスト面での優位性が高まる可能性があります。リサイクル貴金属の生産及びトレーサビリティーに強みを持つ当社にとっては機会と言えます。また環境保全事業においても、脱炭素に向けての移行(トランジション)期における単純焼却からサーマルリサイクルへのシフトは、既に対応を進めている当社にとっては機会になりますし、対象物の拡大を含むリサイクル需要の拡大は、当社の強みであるコンサルティング営業(提案型営業)を活かせる機会となります。
当社はリスクを抑制するとともに、機会の拡大に注力して参ります。
リスク管理
気候変動分科会において、気候変動にかかるリスクと機会に対する対応状況や、CO2排出量を取り纏め、サステナビリティ委員会において、毎年モニタリング及び評価していきます。また取締役会にもその内容を報告し、監督・指示を受けます。合わせてグループリスク管理にも報告することで当社グループ全体のリスク管理に反映していきます。
指標と目標
当社は事業マテリアリティの一つにCO2排出量の削減を掲げるとともに、以下の目標を設定しています。
● 2030年度までに、電気・ガソリンなどエネルギー由来のCO2排出量を、2015年度比で50%削減する
目標達成のためにCO2フリー電力への切り替え、燃料使用量の削減、営業所のZEB化等を進めています。また2050年度にカーボンニュートラルを目指すことを宣言しています(対象はScope1及びScope2)。
当社の環境保全事業で取り扱う産業廃棄物は、リサイクル可能なものはリサイクルしていますが、減容化や無害化等適正処理のために焼却せざるを得ないものがあるのも事実です。よって先ずはエネルギー由来のCO2削減目標の達成に注力して参ります。
(2021年度のエネルギー由来CO2排出量削減率、CO2排出量(Scope1、Scope2)実績は、集計完了後Scope3と合わせて開示予定です)
CO2排出量削減目標とCO2排出量の推移
当社グループにおける2022年度の全CO2排出量は、基準年以降にグループ化された拠点分(国内1拠点、海外1拠点)を除くと、2015年度比で約4%増加しました。内訳として、エネルギー起源のCO2排出量は、燃料価格の高騰や電力会社の事業撤退など悪化要因がありましたが、焼却炉の廃棄物焼却廃熱を利用した高効率発電の安定稼働および電力会社の見直しにより低減し、全体では約27%減少しました。一方、産業廃棄物焼却時に発生する非エネルギー起源のCO2排出量は、2015年度比で約28%増加しましたが、廃プラスチックを焼却し大きく減容化することで、最終処分場の延命に貢献しています。
また上記CO2排出量をScope毎に分けると、Scope1排出量は91.9千t-CO2、Scope2排出量は13.7千t-CO2となります。Scope3排出量は133.3千t-CO2です。
なお上記排出量については一般財団法人日本品質保証機構による第三者検証を実施済です。
温室効果ガス排出量検証報告書
<データの収集範囲>
本社、国内事業所・営業所・工場、グループ会社※、海外子会社※(集計期間4月-3月)
※2023年3月31日現在の連結子会社を対象とし、対象から外れた場合は遡ってデータを更新しています。対象に加わる場合は、加わった年度からデータを追加しています。
<集計方法>
[エネルギー起源]各拠点における電力使用量、燃料使用量に基づき算出(国内排出量は、温対法および省エネ法に準拠)
[非エネルギー起源] 産業廃棄物の焼却量に基づき算出
2050年カーボンニュートラル宣言
さらに長期の目標として2021年12月に2050年度にカーボンニュートラルの実現を目指すことを宣言しました。対象は事業者自らの直接排出であるScope1および他者から供給されたエネルギーの使用に伴う間接排出であるScope2です。Scope3(Scope1,2以外の間接排出、事業者の活動に関連する他者の排出)についても、数値の開示や長期的な削減策の検討を行って参ります。